【藤田 敦子インタビュー Vol.1】大皿彩子さん 〜③柔らかくしなやかな信念〜

大皿彩子さんインタビュー3、いよいよ最終回。
ヴィーガンについて、
考え方捉え方など本質に迫る様々な話を伺いました。

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敦子:アラスカツヴァイは完全なヴィーガンのお客様が多いの?

彩子:それがさ、
うちは日本のお客様はヴィーガンって気づいてなくって、
後から知ったってお客様が多いんだよ。笑
もちろん、海外の方は調べてくるけどね。
でも、海外の方ですら本当のヴィーガンの人はそこまで多くなくて、
やっぱりベジタリアンが多いかな。みんな肉のメニューがないのは知ってるし、
大豆ミート唐揚げなんかは、あれを食べたくて来てくれる人が多いんだけど、
話していると「え、全然動物性使ってないんですか?」って話になる。笑

敦子:そうなのか!意外かも。
まあでも、パンもあるし、当然使ってる、って思う人が多いかもね。笑

彩子:パンの材料を伝えると
「卵もつかってないんですか?」って驚かれること多いよ。笑
カフェオレ頼まれて「牛乳じゃなくて豆乳で大丈夫ですか?」
って確認した時に「あ、そっか!」となる。笑
「そういえば、いつもパンのプレートでオリーブオイルですもんね。
あまりにオイルが美味しいから意識してなかったけど
たしかにオリーブオイルは植物性ですね。」みたいな。

敦子:なんか、それって理想だねー!

彩子:それとね、
アラスカツヴァイは実は『シェフ』がいないんだ。

敦子:そうそう、
だからメニューをどうやって考えてるんだろうって思ってた。

彩子:お菓子、パン、ドレッシングなど安定した味で作り続ける、
と決めているものは私のレシピなのだけど、毎日の日替わりメニューは
野菜ファーストの作り方なんだ。キッチン担当がその日届いた野菜を見て、
メニューを考えているの。

敦子:ひゃー!私ハタチの頃バイトしてたカフェがまさにそうで、
キッチンのときとか超ドキドキしたもん。 笑
主婦だねー。

彩子:たしかに、主婦!
主婦という職業は本当にすごい! 笑

敦子:わかる!
私も自分でたまに(笑)主婦しながら
「これ毎日やってる人って本当にすごいわ。」と毎度尊敬の念を抱いているよ。

彩子:だよね。
ちなみにごはんプレート、カレープレート、スーププレート、サラダプレート、
のプレートメニューはすべて日替わりで365日1日たりとも同じ味は出ていないの。
でもそれが普通なんだよね。
採れる野菜は日々変わるし、同じレシピでも野菜は一つ一つ違うから、
同じ味にならない。

敦子:うんうん、本当にそう。
私が以前PRしてた香水ブランド、同じ名前でもロットごとに香りが変わるのね。
採れる素材の個性が違うから、同じ香りにはならない、って話を調香師が毎回してた。

彩子:そう、まさに。
命をいただく仕事は、命の個性が全部違うから、同じになるはずがないんだよね。
無理に同じにする必要もないし。

敦子:それが普通っていう世の中になかなかならない切なさ・・・。笑

彩子:だから、うちのキッチン担当はすごく技術と理解が必要で、難しいと思う。
野菜の個性を見極めて美味しくする方法を探すことの連続だよ。

敦子:大変だけど、とってもやりがいがあるね。
ちなみにさっきも話した私が関わる食関連の仕事の話、
さいちゃんにお願いしたかった理由のもう一つが
そういうこと全てわかった上で、偏りなく一緒にやってもらえそうだな、
と思ったからなんだよね。

彩子:さいころ食堂もアラスカも、
その仕事で関わった人がみんな幸せになることを価値基準としてるんだ。
これって恥ずかしいくらい、実は自分たちのためなの。笑
あとさいころ食堂は、大きな仕事にできるかよりも関わった方々に
「またこの人たちと仕事したい。」と思ってもらえる事を大切にしようって。
関係が続くことがいちばん尊いなって思ってる。

敦子:本当に。始めることより
続けることのほうが最も大変って自分が仕事してても思うね。

彩子:そうそう、
私が独立して一番最初にパン屋さんから言われた言葉で、
「朝、店を開けて当たり前の営業をする。
それを毎日続けていくことが一番難しい。」って。
それまで、広告で3ヶ月、半年、と
期限つきの仕事をやっていた自分にとっては衝撃的だったことを覚えてる。
当たり前の営業を10年続けることがどれだけ難しいことか・・・。
そういう仕事がしたいなって思ったな。
続けられるか、クライアントさんに続けてもらえるか、も大切だね。

敦子:「クライアントさんが続けていけるサービスの提供」も必要だしね。

彩子:うん。
結局、「この人たちにずっとお願いしたい。」と思ってもらえたら幸せ。
そういう意味では、さいころ食堂の仕事は単発がないの。
ずっと契約していただいていて、5年以上続いてるクライアントさんもあるんだよ。

敦子:長いね!いいねー!!
すごいなあ。続いてるって。
でもさ、長年やっていて、この仕事の苦労ってやっぱりあったりする?

彩子:さいころ食堂としては、
クライアントさんとのチューニング期間で大変だと感じることもあるかな。
でも、そこでチューニングできたクライアントさんと長くやっているよね。
アラスカツヴァイは、店としてのことと個人の人生を考えちゃうんだよね。
だから、働いてる子の人生のために、店のことを後回しにすることもあるかも。

敦子:そういうオーナーだと、女性が働きやすいよね。
女性ってさ、そういう機会がたくさんあるじゃん?
転機っていうか・・・。

彩子:そうそう、早い段階で女性は人生の転機があって、
でも自分もそれを掴んできたからこそ店の子の人生の転機も大切にしたいなって。
辞める子にいつもいうのが
「縁は永遠だし、一緒に仕事したことの事実は永遠で、また機会があれば
一緒にやれるかもしれないし、私はいつでも一緒に働きたいと思ってるよ。」って。
その縁が永遠であることの尊さは常に伝えてるかな。

敦子:泣きそう・・・。笑(すぐ泣く。笑)
あともう一個聞きたい!
ヴィーガンって昔からあるものだけど、
私自身、言葉としてはやっと浸透してきてるのかなって感じていて。
そんな中、アラスカツヴァイとしてヴィーガンの意味とか、
本質が少し伝わってないなと感じることってある?

彩子:うーんとね、難しいね。笑
たとえば、うちはスムージーだとプラスチックのストローだし、
あとはおしぼり出すときの周りがビニールだったりするじゃん?
それをたまに「ヴィーガンとかオーガニックレストランで
ストローがプラスチックなんですね。」っておっしゃる方もいらっしゃって。
その人に悲しい思いをさせてしまったのは本当に申し訳ないと思う。
もちろんプラスチックがない世界は理想だけれど、
現時点で、関わるみんなの幸せ度合いを考えると
「カフェで心地よく過ごしてもらうこと」を一番大事にしたい、
っていうのが私たちの見解なの。
今は飲みやすいストローがプラスチックしかないからそれを使うけど、
ストローがあったほうが、お客様がカフェにいる時間を快適に過ごせる、
っていう「心地よい時間」の方を取りたいな、と。
世間の価値観が動いてきて、プラスチックのストローに不快感を持つ人が
多くなったな、って感じたら変えるかな。
心地よく過ごしてもらえなくなるからね。
何を大事にするかというのも、ただ人によって違うだけだからね。

敦子:誰か一人がそう言ったからとて、世の中全てがそう、じゃないからね。

彩子:オーガニックをとってみても、
うちは全てがオーガニックではないの。
でも、アラスカではお料理の見た目で
「こんなにたくさん野菜がとれるんだ!」と思ってもらいたいし、
お口休め的に野菜をいっぱい食べてもらって、満足感を持ってもらいたくって。
「野菜を食べたい!」という気持ちに応えるために
オーガニック以外の野菜も使って華やかにしてる。
だから、苦労というか気をつけていることの一つは、
オーガニックや環境や自身の食生活に対して
強い考えを持っている方にどう接するか、かな。

私たちは誰のことも否定しない、全ての考え方を肯定しよう、って思ってる。
私たちも本当は使いたくないけれど、そこまでできてなくてすみません。
って謝罪することもあるし。

敦子:今の話聞いてて一つ、
今日私が感じたことを思い出したんだけどね。
サランラップをあまり使いたくないと思って、
シリコンのケースを使って、お米を冷凍していて。
蒸し器を使って玄米を戻したときに、
冷凍して結構時間が経っていたから
シリコンの味がしちゃって。笑
それを食べた瞬間にさ、
「ああ、これって本当に正解なのかなー?」って思ったよね。
もちろんゴミを無くしたい気持ちはあるんだけど、
毎回、玄米を美味しく食べられないことってすごく悲しい。
玄米とか、作っている農家さんに対して敬意を払えてないなって。笑
とはいえ、シリコンケースもそれはそれで思いを持って作っているはずだから、
やっぱりいろんな部分で偏りなく肯定して生きたいなって思ったよ。
あと、『選べる目や選択肢を持つこと』も大切だなって。

彩子:うんうん、考え方はすごく柔らかくいたいよね。
常に潮流は変わるわけで。
もしかしたら、紙ストローもいいものがでるかもしれないし、
私がなかなか流行らないなって思ってるマイストローの時代が来るかもだしね。
でも、常に『自分はこう』は絶対じゃないから。
自分がこうってことよりも、今の自分を取り巻く人たちの満足度を
柔らかく高められる人でいたいなと思ってる。
だから、「私は正直紙ストローの味が好きじゃないけど
みんながそっちの方が気持ちいいならそっちにしようか。」は、あり。

敦子:うんうん、ちなみに私個人的には
紙もステンレスのストローも、味があんまり好みじゃないんだよね。笑
でも唯一、ガラスはいいなって思った。
味も良かったし、洗うときも見えるから、気持ちいい。
プラ以外だとガラスだなって。笑
あと、プラスチックが良くないって言っても
じゃあ周りで完全にプラスチックを排除できるか、ってなると難しい・・・。
だから私もやっぱり、否定してくる人を否定し返たりしないで、
柔らかく肯定したいなって思う。
彩子:そうそう、自分はそうでも人を否定しない方がいいなとは思うよね。
あと、やっぱり苦労するって言ったらヴィーガン、オーガニックに厳しい目が
向いた時に、自分たちがどういう考えを持っているのかを問われるから、
結構『なぜ自分の店はこうしてるのか』をみんなに話すし、
自分たちの意見を話し合うね。
同じことをみんなで共有して、お店としてブレないことが大事。

敦子:ディスカッションって大事だよね。
また私の話になっちゃうけど(笑)、
この間アシュタンガヨガの徳島リトリートにいったときの話で。
みんなで意見をディスカッションすることをサットサンガっていうんだけど、
先生が「みんなもっとサットサンガしていきましょう。」って呼びかけてたの。
で、その後一緒に行ってたメンバーで帰りの車で話してる時に気づいたんだよね。
「あれ、私たちってこうやっていつもサットサンガしてるねー。」って。
誰かの意見を否定するんじゃなく、みんなの意見を聞きながら
「私はこう思うけど、あなたはどう?」
が言えるって、すごくいいことだなと思ったんだよね。
意見が違うって面白いし、意見を交わすことで理解を深めたりできるし。

彩子:そういうこともグローバルな考え方で必要だよね。
多様性のある社会ってさ、考え方を表に出したり、
『自分がこうである』を表に出すことを怖がらない世界なんだけど
そこには、みんなが相手を否定しないマインドが必要だよね。
昔から日本でそういう文化が育たないのは、
『自分がこうだ』を言わない、言いにくいってのがあるかもね。
どこの政党に投票したか言わないとか・・・。

敦子:それーーーー!超わかる。笑
うちも親に昔「どこの誰に入れたの?」って
よく聞いてたんだけど、「そんなこと聞くもんじゃない!」って怒られて・・・・
なんで怒られるのかなってずーっと不思議だった。笑

彩子:あれは、批評し合うことを恐れてるよね。
否定と批評は違うと思うんだけどな。
意見をぶつけあうことを怖がるというか・・・それは日本の特徴かも。
でも、これから先いろんな人が一緒に住む国、場所になってくると思うし、
食の話だけではなくて、やっぱり全ての考え方において
私は柔らかくしなやかにいたいと思う。
店も仕事もね。そういうあり方をしたいなって。

敦子:お子さん生まれてよりそう思った?

彩子:うん、さらにそう思った。
子供が生まれてすごく思うのは、この子の生きる未来に、多様性・・・
ほんとそればっかりだけど (笑) でもそれが全てを受け入れてくれる。
みんなが認め合う社会とか、認め合うことが当たり前の人たちに
囲まれて生きてほしいな。

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・・・と、まあ長い! 笑

この日は、スタッフさんと新しいメニュー開発もしつつ、
子供をあやし、さらに私ともたくさん話をしてくれました。

逕サ蜒・

結局取材と言いつつ、最後は
『物事本質の話』みたいになってしまったわけですが。笑

こうやってあっけらかんと話す彼女は
一本しっかりとまっすぐな芯が通っていて、やりたいことや信念、
食や人間関係に対しての考え方や捉え方、関わり方や距離感等々に
私は惚れたんだな、とあらためて感じた次第でした。

お店も本当に素敵で、たまにイベントも開催しているので
情報はぜひInstagramの
@alaska_zwei からどうぞ♬

そして次回も対談。
たまたまアラスカツヴァイに初めて行った時に一緒だった友人夫妻であり、
今もなお癌と戦いながら、私に日々多大なる影響を与えてくれている
『DAY BY DAY』のお二人にお話を伺いましたのでどうぞお楽しみに!

大皿彩子さんprofile

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大皿彩子(Saiko Ohsara)
(株)さいころ食堂 フードプランナー Vegan cafe [Alaska i] 店主

プロフィール
広告会社勤務を経て、2012年(株)さいころ食堂を設立。
2016年中目黒にVegan cafe[Alaska zwei]をスタート。
Veganを含む“おいしい企画”のプランナーとして、
フードブランドプロデュース、レシピ開発、
空間・イベントコーディネートなどを行う。

Instagram:@saikolo
HP:saikolo.jp

ABOUTこの記事をかいた人

アバター

大手化粧品会社PR・企画開発担当後、オーガニックコスメのPRを経て、現在はフリーランスで様々なジャンルのブランドのPRを担当。また、イベント企画やマネジメントなど、活動は多岐にわたる。京都出身。