「ありがとう」に満ちている、北海道の佐々木ファームに行ってきた話

今回は大泉工場社長の大泉が、北海道・佐々木ファームに訪問した際の様子をお届けします。

 

「大泉さん、ポップコーンの話がありまーす!」

突然、北海道から、オンライン上でしか会ったことのない「佐々木ファームの佐々木さん」から連絡をもらう。「ポップコーン」に目がない自分は、すぐに会いにいくことを決断・・・。

コロナ禍第一波真っ只中の2020年6月、大泉工場主催でMeet Up JUICE! Onlineというオンラインイベントを開催した。出展していただいた方々は、本当に多種多様な、ただ目指すべき方向は、ざっくり言うと「地球の環境を美化し、健康である世の中を創る」という共通の想いのもと、集まっていただき、初めての試みではあったものの、ネットワークを深めるという意味では成功に終わった。

その参加者の中で、一際異彩を放っていたのが、北海道からオンラインで参加してくれた、佐々木ファームの佐々木麻紀代表。自社農場のことを熱く語っていただき、数多くの参加者を魅了、オンラインおよび電話越しでお話ししているだけで、とてもエネルギーを感じた方だった。

 

自分は迷うことなく、佐々木ファームのある虻田郡洞爺湖町に向かった。

遠くに並んでいるのは、今シーズンのポップコーン

遠くに並んでいるのは、今シーズンのポップコーン

2020年11月14日(土)、佐々木ファームのある洞爺湖に人生で初めて訪れたが、澄み切った空気を目一杯吸い込むと、頭が空っぽになる、特別な感覚を得た。視覚・触覚からはなんとも言えないエネルギーが自分に入り込んでくる。ここにある農場だったら、とんでもない野菜が作られているのではないかと、気持ちが高まった。

佐々木ファームのある一角に足を踏み込むと、たくさんのスタッフの方々が笑顔で出迎えてくれた。皆、今日、これからの作業に対する高揚感を隠しきれないと言った感じで、そのワクワク感が伝わってきた。

そして、ついに佐々木さんとご対面。初めてとは思えない、気持ちのいい距離感で、話が始まる。

大泉:
初めまして・・・ですが初めてな感じがしません(笑)

佐々木:
そうですね〜(笑)

大泉:
Meet Up! JUICEにご参加いただき、また今日も貴重なお時間をありがとうございます。

佐々木:
はい、こちらこそ、6月は貴重な機会を用意していただき、ありがとうございました!とても刺激的でいい時間でした。

大泉:
自分たちも初めての試みだったので、不十分なところもありましたが、ぜひ、業界を盛り上げるためにも引き続き、同様なイベントを実施したいと考えております。
おっ!これが例のこちらで作られているポップコーンですか?

佐々木:
そうです、現在、イエロータイプとバイカラーの二種類あり、後ほど乾燥させている場所もご覧にいただこうと思います。

オーガニックのポップコーンに加え、フレーバーも自社で作られていた

オーガニックのポップコーンに加え、フレーバーも自社で作られていた

大泉:
(弾いた感じが)小ぶりですが、味付けも独特で美味しいです。自然の甘味で、食べる手が止まらなくなります。

佐々木:
はい、ビーツと甜菜糖で作った甘味料で、天然の甘みをつけています。

大泉:
やっぱりポップコーンはいいですね。しかもこれは自然栽培でできていて、安心して子供にも食べてもらえるし、大人も笑顔になる。

佐々木:
ポップコーンがこのようにできていること、知っている子供も多くないので、伝えていきたいですね。大泉さんはアメリカのポップコーンを、どの様な形状で輸入されているのですか?

大泉:
全てふさから取られた形で、50lb(22.68kg)の袋で輸入しています。ですので、とうもろこしの形をしたポップコーンというのを目にする機会は、滅多にありませんし、確かに最近の子供たちは見たこともないのではと思います。
ただ、ヨーロッパなどではこの形状でプロダクト化しているメーカーもあり、興味深いですね。アメリカの業務用ポップコーンのような、大袋という形状で、国産のオーガニックポップコーン豆を業務用で卸すのは、先になりそうですが、今後必ず需要は伸びると考えています。

佐々木:
なるほど、業務用は先でも、この形状を生かしたプロダクト展開は面白そう。

大泉:
何か一緒に、ポップコーンの新たなビジネスができたらいいなと、思います!
本当に佐々木さんは色々なチャレンジをされていらっしゃいますが、そもそも、佐々木ファームってどんな農場なのですか?

佐々木:
では、ちょっと佐々木ファームの歴史をお話ししますね。

大泉:
よろしくお願いします!

 

バイカラーのポップコーンを片手に、農場について語ってくれた

バイカラーのポップコーンを片手に、農場について語ってくれた

佐々木ファームの歴史(佐々木麻紀代表談)

もともと、洞爺湖町の佐々木ファームのあるエリアは、大木が生い茂り、農場ではなかったところを、私の曽祖父が、当時は一晩かけて歩くほど遠い、ニセコの山まで行って、山籠りをしながら線路の原料となる枕木を切って売る、木こり業で農園づくりの資金を集め、開墾しました。

長い年月をかけて農地が出来上がり、当初は畑作(豆や甜菜、小麦などの栽培)から始まりました。父がアメリカで先端農業の勉強をし、帰国後、20歳の頃に(1970年台)、野菜の栽培に移行。当時は「レタス」という野菜すらポピュラーではない時代、生産者グループを作って市場を開拓していきました。

また当時は今と違い、敗戦ののち、日本国内では「お腹を満たすことが夢」という時代背景があり、GHQが持ち込んだ、当時は最先端の化学肥料や農薬を使い、まさに「夢」のごとく野菜をどんどん生産することを、佐々木ファームでも実践し続けていました(現在は一切、そういった化学肥料や農薬は使用していない)。

 

現在は、14町(約42,000坪)の農地で、北海道では2番目の規模でレタスを販売しています(後述するが、現在の佐々木ファームでは、全て自然栽培で多品目の野菜を作っている)。

訪れた前日、雪に見舞われていたが、その下からは青々とした美味しそうな葉物野菜が顔を出す

訪れた前日、雪に見舞われていたが、その下からは青々とした美味しそうな葉物野菜が顔を出す

4人姉妹の三女だった私は、幼い頃から農業に関心を持っており、18歳から2年半、ニュージーランドで農業研修を受けました。園芸科では、葡萄やワイン、ランドスケーピングなどを学び、佐々木ファームを受け継ぐ準備を進めていました。

しかし、長女夫妻が佐々木ファームに従事することになったため、23歳の頃から、飲食業界に入り、北海道・東京のフレンチやベーカリー、イタリアンレストランなどで、飲食に関わるほぼ全ての経験を積むことに。実はそれが今の「業務野菜卸事業」の礎を築くことになっています。

ビニールハウスでは、葉物野菜の数々が育てられていた

ビニールハウスでは、葉物野菜の数々が育てられていた

一方、農業未経験だった長女夫妻が、「ありがとうの奇跡」という本との出逢いをきっかけに「ありがとう農法(農場で育てている作物やそこに従事してくれているスタッフの方々にとにかく「ありがとう」と言い続ける農法)」を実践していました。

2013年より、慣行栽培から自然栽培、循環農法に切り替えていき、命を伝える農家としてのアクションが始まるとともに、直接販売もスタート。現在の佐々木ファームの方向性を形成して言ってくれたのです。そして2015年には「ありがとうファーム」として、佐々木ファームの知名度は上がっていきました。

しかし、全てがうまくいっていたわけではなく、その裏では、父母が懸命に有機野菜を栽培し、販売することで、経営を支えてくれていました。

 

その後、長女夫妻は命を伝える活動に注力するべく、淡路島に転居。

2017年より、私が代表となり、現在も自然栽培で品質の野菜を作り続けています。

アイスシェルター内の大根やキャベツたちは、貯蔵することで糖度が増す

アイスシェルター内の大根やキャベツたちは、貯蔵することで糖度が増す

自然栽培の野菜は、形も不揃いで生産方法も独自のもの(何も使っていないだけなのだが・・・)という理由で、JA(農協)が買い取ることはないので、販売方法はほとんどが直接販売となり、ほとんどが飲食店に卸されています。会員になれば、個人でも購入可能ですよ!(笑)

 

ここまで話を伺い、まさに活きた農業を実践してきた佐々木ファームのストーリーに魅了された。

 

大泉:
非常に興味深いお話、ありがとうございました!ぜひ弊社直営の、川口市にある1110 CAFE/BAKERYや、西麻布の大泉工場NISHIAZABUでも取り扱わせていただきたいと、本当に思いました。

佐々木:
そういえばお昼ご用意するって言っていたのに、時間なくなっちゃいました!急いでおにぎり、握りますね。

と、おもむろにおにぎりを作り出す佐々木さん。

美味しいおにぎりをささっとご用意いただく。言うまでもなく、どんな北海道の名品より絶品なおにぎりだった

美味しいおにぎりをささっとご用意いただく。言うまでもなく、どんな北海道の名品より絶品なおにぎりだった

 

どんどん話に引き込まれてしい、あっという間にフライトの時間が近づいてしまいました。

最後に、佐々木さんからみなさまへのメッセージをいただきました。

 

私たちは『未来に繋がる農と食』をテーマに農業をしています。先祖から大地といのちのバトンを受けたように、私達も今できることをやっていきたい。

このエネルギー溢れる大地で、自然と寄り添う循環型農業で日本中にパワーいっぱいの野菜たちをお届けするのが私たちの使命。

ぜひ、みんなで畑や食を通じて繋がり

大きなファミリーとなって一緒に自然を守り楽しい未来を共に切り開いていきませんか?

きっとちいさな一歩が未来の大きな変化に繋がると信じています(^○^)

 

ビニールハウス内で乾燥作業中の玉ねぎ・ポップコーン

ビニールハウス内で乾燥作業中の玉ねぎ・ポップコーン

乾燥中のポップコーンは、硬く、十分な水分を含んでいる

乾燥中のポップコーンは、硬く、十分な水分を含んでいる

 

お父様が設置したというアイスシェルター内にて。北海道の地の利を生かした、自然の冷蔵庫。ここに貯蔵するだけで、糖度が上がるとのこと。

今年の紅くるり大根は、通常の1.5倍の大きさまで大きくなり、とても甘く仕上がっているとのこと

今年の紅くるり大根は、通常の1.5倍の大きさまで大きくなり、とても甘く仕上がっているとのこと

どうみても重労働なのに、とても幸せなオーラが漂っていた

どうみても重労働なのに、とても幸せなオーラが漂っていた

働く人々は、皆総じて笑顔で、楽しそう。

アイスシェルター内で作業するのは女性の方々で、男性たちは収穫に行っているという。

 

全てのスタッフさんたちが生き生きと動いている職場には、口に出さなくとも「ありがとう」が溢れていた。ここにいる人たちは、「働いている」という感覚が、いい意味でないのかなと感じた。本当に素敵な環境で、素敵な野菜を素敵な仲間たちと共に創ることが楽しくてしょうがない、そんな印象。

こんな環境で生み出された野菜が美味しくないわけがない!

他方、どんなに素晴らしい野菜を創っても、流通できず売れなかったら、継続していくこともできないという厳しい現実も、過去には直面したという佐々木さん。

化学薬品や農薬を使わず、手間暇かけた野菜は、もちろん通常の野菜よりは価格も高い。しかし、その理由(=ストーリー)を知っていただければ、必ず選択肢の一つになると思う。

ぜひご一緒に、「ありがとう」の溢れた野菜を、たくさんの方々に知っていただくお手伝いをしたいと感じる、いい時間だった。

 

佐々木ファームの野菜に興味を持っていただいた方は、ぜひ、下記リンクよりwebサイトをご覧ください。

http://sasakifarm.net

ABOUTこの記事をかいた人

大泉寛太郎

1981年生まれ。 学生時代より、イベントチームやフットサルチームの立ち上げ、BarなどでDJとして活動。 大手商業施設でテナントリーシングや営業企画、PR、広報など幅広い分野を経験したのち、2008年大泉工場入社、2012年より現職。 アジアからオセアニア、ヨーロッパ、北米、アフリカと世界中を飛び回り、地球の「今」を体感。 「地球を笑顔で満たす」というMISSIONを掲げ、日々、いかに「素敵な環境を創造するか」自問自答しながら生きている。 にゃん丸という愛猫と二人暮らし。