~ネジ、なめんなよ。~プラスドライバーの正体と現場で役立つネジの見分け方

こんにちは、メンテナンスチームwatanabeです。

今日は奥深いネジの世界へ皆様をご案内したい。

子どもの頃、はじめて手にした工具は何だったろう。多くの人にとって、それはおそらく「ドライバー」ではないだろうか。しかも、マイナスではなく“プラス”のほう。ネジの頭に十字の溝があって、そこにぴたっとハマる感触。回すたびに「自分、なんかすごく修理してる」気分になる、あれだ。

だがこの「プラスドライバー」、正確には「フィリップスドライバー」と呼ばれるものがその始まりだ。1930年代、アメリカのヘンリー・フィリップス氏が開発したこのネジとドライバーは、マイナスに比べて中心をとらえやすく、電動工具との相性も抜群。大量生産の自動車工場で大活躍した。

しかし、日本には独自の規格がある。JIS(日本工業規格)だ。外見はほぼ同じでも、ネジの溝の角度や深さが微妙に異なるため、フィリップスドライバーでJISネジを回そうとすると「なんか滑る」「うまく力が入らない」という“ネジなめ”現象を引き起こすことがある。逆に、JISドライバーでフィリップスネジを回すと、今度はドライバーの先端が欠けたりすることも。

ここで一度、代表的な「プラスネジ三兄弟」の特徴を整理しておこう。

フィリップスネジ(Phillips)

十字の溝が特徴で、中央がやや丸みを帯びている。トルクが一定以上にかかるとドライバーがスリップして外れる「カムアウト」設計。過剰な締め付けによる破損を防ぐ構造で、世界中の工業製品に幅広く使われている。

JISネジ(日本工業規格)

フィリップスネジと似ているが、溝の角度や深さに違いがある。識別の目印として、ネジ頭に「●」マークがついていることが多い。日本の電機製品や精密機器にはこのJISネジが多く使われており、専用ドライバーでないとネジ山を痛めやすい。

ポジドライブネジ(Pozidriv)

十字の溝に加えて、斜めの補助リブが入っているのが最大の特徴。これによりトルク伝達効率が高く、カムアウトしにくい。ヨーロッパの工具や家具などに多く採用されているが、専用ドライバーを使わないと一発でネジ頭が潰れてしまうので要注意。

こうした微妙な違いは、図面や仕様書には載っていないことが多い。見分けるためには、ネジの頭の仕上げを観察したり、実際に数種類のドライバーを当ててみるしかない。そして、フィットするドライバーを見つけたときの「これだ!」という感覚は、ちょっとした快感すらある。

まとめ

われわれ修理屋にとって、こうしたネジの種類を見抜けるかどうかは、技術以前の基礎体力のようなものだ。特に古い機械や海外製品を扱う場面では、「このネジ、何者だ……?」とドライバーを3種類並べて順に試すのは日常茶飯事。ぴたりとハマったときの達成感は、ちょっとしたパズルが解けたような気分になる。

そんな地味な積み重ねの先に、私たちの仕事がある。たとえば、当社で扱うポップコーンマシンの釜を外すとき、コールドプレスジュースマシンのカバーを開けるとき。ほんの一本のドライバーの選択が、確実な分解と、正確な修理につながっている。

ちなみに、当社で扱っているポップコーンマシンやコールドプレスジュースマシンのネジも、よく見るといろいろな形がある。今度ネジを見かけたら、ちょっとだけ立ち止まって眺めてみてほしい。案外、奥が深いかもしれない。