電気自動車(EV)は本当に「地球に優しい」のか?

こんにちは!BROOKSでデザインを担当している森田健太郎です。

普段はデザインの仕事に没頭していますが、実はかなりの車好きでもあります。以前シドニーに住んでいた頃は、トヨタのMR2やフォルクスワーゲンのシロッコをいじっては乗り回す、そんなガソリンの匂いが漂う生活を送っていました。

外国では、テスラを見かけない日はないほど、電気自動車(EV)が主流になりつつあります。正直なところ、エンジン音にロマンを感じてきた僕としては、あの独特の鼓動がモーターの静寂に取って代わられることに、少し寂しさを感じることもあります。でも、時代の流れを見れば、ガソリン車が「古き良き時代の遺物」になる日は、そう遠くないのかもしれません。

テスラを超えた?急加速するEV市場の裏側

「EVといえばテスラ」というイメージが強いですが、今の世界市場はもっとダイナミックに動いています。実は現在、世界シェアでテスラを猛追、あるいは凌駕しているのが中国の「BYD」というメーカーです。その勢いは凄まじく、EVの普及は私たちが想像する以上のスピードで進んでいます。

中東情勢によるガソリン代の高騰に振り回されない、自宅でスマートにチャージできる、そして何より走行中に排気ガスを出さない。「環境にいい」というキーワードと共に語られるEVですが、ここで一度、立ち止まって考えてみたいのです。

「EVは、本当に100%クリーンな存在なのだろうか?」

隠された「バッテリー」の課題:環境負荷と人権問題

EVが走る時はクリーンです。しかし、その「心臓」であるバッテリーが生まれるプロセスに目を向けると、いくつかの深刻な課題が浮かび上がってきます。

製造時のエネルギー消費
EVのバッテリー製造には膨大なエネルギーが必要です。現状、その電力の多くが化石燃料に依存している地域では、車が走り出す前の段階で、ガソリン車よりも多くのCO2を排出しているという皮肉な現実があります。

リサイクルの壁
現在の技術では、使い終わった巨大なリチウムイオンバッテリーを完全にリサイクルするのは非常に困難です。多くが廃棄され、土壌汚染のリスクを孕んでいるのが現状です。

コバルト鉱山の人権問題
これが最も胸が痛む問題かもしれません。バッテリーに不可欠な「コバルト」の多くはコンゴ民主共和国で採掘されていますが、そこでは劣悪な労働環境や、幼い子供たちが採掘に携わる児童労働が国際的に問題視されています。

「環境にいいから」という理由で選んだEVが、見えない場所で誰かの犠牲や環境破壊の上に成り立っているとしたら、それは本当の意味でのサステナビリティとは言えませんよね。

未来を照らす「次世代のテクノロジー」

この矛盾を解決しようと、世界中の企業が動き出しています。

例えば、コバルトを使わない「LFPバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン電池)」の普及が進んでいますし、さらにその先には、より安全で高効率な「全固体電池」の実用化も目前に迫っています。

また、テスラの共同創業者が立ち上げた「Redwood Materials」のような企業は、古いバッテリーから95%以上の素材を回収して再利用する、完全な循環型サプライチェーンを構築しようとしています。

私たちが選ぶべき「未来のカタチ」

EVはまだ、完成された「正解」ではありません。発展途上の、大きな可能性を秘めたプロセスの中にあります。

かつて僕がシロッコのエンジンをいじっていた時のように、車を愛でる楽しさはそのままに、そのエネルギーがどこから来て、どう還っていくのか。その背景にまで想像力を働かせることが、これからの時代の車との付き合い方になるのではないでしょうか。

大泉工場が大切にしている「地球との共生」という視点で見た時、EVが本当の意味で地球を笑顔にする存在になれるよう、僕もデザイナーとして、そして一人の車好きとして、これからの進化を注視していきたいと思います。