手に触れるもの、届くものの価値について

こんにちは。大泉工場でWebディレクターをしています、白熊です。
ECサイトやブランド全体のデジタル戦略を担当しながら、日々“届け方”について考えています。
どんな情報が、どんな文脈で、誰に届くと嬉しいのか。どんなふうに届いたら、ちゃんと使ってもらえるのか。そんなことを考えながら、手を動かしています。


「ECって、どこまでがWebなんだろう?」

最近、そんな問いがよく頭に浮かびます。

SNSも、ブログも、メルマガも、動画配信も、すべてWebです。けれど、たとえばECサイトの場合、最後に商品が届きます。
つまり、画面を離れ、身体に接触するリアルなモノとしての体験が発生するのです。

本も同じです。
電子書籍で読めば情報としては変わらないのに、あえて紙の本を買って、ページをめくり、かすかなインクの匂いを感じながら読む。そこには「読む」以上の行為があります。

触れること、手に取ること、所有すること。
身体的なプロセスを経て得られる体験は、“記憶に残る密度”が違うようです。


大泉工場と_SHIP KOMBUCHAが目指すものづくり

私が所属する大泉工場では、「世の中を素敵な笑顔で満たす」をテーマに掲げ、
人と地球の未来を見据えながら、プラントベースや発酵といったアプローチを通じて、日々の商品開発に取り組んでいます。
おいしさにはきちんと向き合いながら、からだにも環境にもやさしく、暮らしの中に心地よく溶け込む、そんなものづくりを目指しています。

その中核をなすのが、コンブチャブランドの_SHIP KOMBUCHAです。
現在はそのECサイトのリニューアルを進めており、ただ見やすくする、買いやすくするというだけでなく、手に取ったときの感覚まで設計に含めたいと考えています。


届くことから、体験は始まる

私が考えているのは、情報を届けるだけでなく、実際にモノが届くことで始まる体験をどう設計できるか、ということです。
ECでも定期便のように、商品が生活の中に何度も入り込むような場面では、
「ただ届いた」だけでは終わらない仕掛けがますます重要になると感じています。

  • 初回の箱を開けたときに、思わず誰かに話したくなるような“気持ちの余白”があるか
  • 毎月の定期便が、ただのルーティンではなく、小さな楽しみとして届くかたちになっているか
  • 手にした瞬間に、質感やサイズ、重さまで含めて「ちょうどいい」と感じられるように設計されているか

そうした届く体験そのものが、その後の記憶や共感を左右すると感じています。

デジタルの中にも、ページをめくるような“リズム”を感じさせたり、
文章やビジュアルが“手で触れたような”感触を残すことができるかどうか。
そこにも、実体のあるモノと情報が出会うヒントがあるのではないかと思います。


事業会社で働くWebディレクターだからできること

Webディレクターの仕事は、デジタル上の構造設計やUI/UXだけでなく、
人の感情に触れるような、より感覚的で生活に寄り添う設計にも手を伸ばせる領域になってきました。

そして、それが本当の意味で可能なのは、私が事業会社の中にいるからだと感じています。

もちろん、デザイン会社や代理店でも素晴らしい仕事はたくさんあります。
ただ、どうしても関われるのはアウトプットの一部分であることが多く、
「商品が届いたあとに、受け手の暮らしに何が起こるか」までを想像しながら動くことは、難しい場面もあります。

一方で、事業会社では、もっと広く深く関わることができます。
たとえば、「この定期便、実際どんなふうに受け取られてるんだろう?」と思えば、
お客様に直接インタビューをすることもできるし、製造現場に立ち会ってリアルな体験を共有することもできる。

つまり、自分自身も実態をともなったユーザー体験の一部になれるのです。

私がやりたいのは、コンテンツやデザインの表面だけではなく、
その先にある「生活の変化」までを想像しながら設計を続けていくことです。

買って終わりではなく、届いてから始まる体験までを、
デザインや構造、言葉の一つひとつでつないでいくような仕事。

だからこそ、ECやD2C※(Direct to Consumer、企業が一般消費者に対して直接取引を行うビジネスモデルのこと)の現場で、
「最後の一手」である“生活への入り込み方”まで関われるのは、本当に面白いと感じています。


情報だけではなく、暮らしに溶け込む体験を

これからの時代、実体のない情報だけで心を動かすことが難しくなると思います。
一方で、「届く」「触れる」「使う」というリアルな体験とつながる情報発信には、まだまだ伸びしろがあると感じます。ECというフィールドが魅力的なのは、最終的に“生活の風景を少し変える”ところまで設計できることです。
ただ買ってもらうのではなく、その人の暮らしのどこかに、静かに入り込んでいく。
そんな体験を生み出す設計を、これからも続けていきたいと思います。