先日、EXPO2025大阪・関西万博に行く機会をもらった。
たった1日の滞在だったけれど、想像をはるかに超える濃密な体験だった。
今振り返っても、あの空間で渦を巻いていたエネルギーは異次元という言葉がぴったりだと思う。
僕が体験できたのは、全体のほんの一部、もしかしたら1%にも満たないかもしれない。
それでも、あの短い時間で感じ取ったものの密度は、いまだに体の奥に残っている。まるで魔法にかかったかのようだ。
記憶の断片をメモのように並べると、こんな感じになる。
・熱狂を生み出すやり切る力の総力戦
・体験を与える側と受け取る側のコミュニケーションの違い
・「数」より「濃度」をどう選ぶか
・豊かさの定義はどこにあるのか
・“魔法大戦”のような演出は心を奪う
・地球規模で見た経済格差の現実
・そして、「先行者利益」
どれも実に奥深い気づきだったけれど、今回は最後の「先行者利益」について書きたい。
僕が万博に行けたのは、実はちょっとしたご縁があったからだ。
北欧パビリオンで行われた「Celebration of Sauna Life」という、サウナを軸にしたコミュニティに関する講演に招待していただいた。
なぜ僕に招待が届いたのかといえば、僕が“初代フィンランドサウナアンバサダー”の一人だから。
……と書くと、唐突に聞こえるだろう。
だから少しだけ、その背景を説明したい。
日本で「ととのう」という言葉が流行るずっと前から、僕はサウナに通っていた。
振り返ると、もう22年。
社会人になってすぐ、職場の上司に連れられて体験した、サウナのある生活。気付けば僕にとっては大切な、頭と体がリセットされる習慣になっていた。
その習慣を続けるようになって数年後、大泉工場に入社したての28歳の頃、旧友と飲んでいるときに偶然、同じ趣味を持っていることがわかり、それから毎週のように、共にサウナに通うようになった。そしていつしかサウナの中で、未来の理想を語るようになる。
「いつかサウナを仕事にしたいな」なんて、酔いながら話していた。
僕は、一度口にしたことはやりたくなるタイプだ。
気づけば本当に、サウナの本場フィンランドと縁ができ、サウナをビジネスにしていた。
実際に現地を訪ね、本場フィンランドのサウナ文化を肌で感じ、
「日本でも、フィンランドで感じた、自然と一体化する究極の心地よさを届けたい」と思うようになった。
まだ誰もサウナブームなんて言葉を使っていなかった頃だ。
2010年代初頭、SNSで「サウナが好きだ」と言っても、変人扱いされるような時代。
それでも、あの静寂と熱の世界に惹かれ、僕は動き続けた。
結果的に、ビジネス的な成功とは言えなかった。
でも、その“先にやった”という事実が、後に評価された。
フィンランド大使館から、初代フィンランドサウナアンバサダー7人のうちの一人に選ばれたのだ。
この出来事をきっかけに、「先行者利益」という言葉を改めて考えるようになった。
“先行者利益”というと、
真っ先に思い浮かぶのは「最初にやった人が得をする」という意味だろう。
けれど僕は、単に“早く始めた人が勝つ”という解釈ではなく、
“誰よりも早く動いた人だけが見える景色がある”という風に捉えている。
早く動くというのは、勇気がいる。
周囲から笑われたり、理解されなかったり、時には孤独になる。
でも、それでも「やりたいからやる」。
その純粋な衝動こそが、結果的に“利益”になる。
利益とはお金の話だけじゃない。
世界を一歩先に感じられる“体験の優位性”のことだ。
ただし、ただ単に「やりたいからやる」のではなく、そこにビジネスの可能性を見出しているから、やる。市場がない中で言語化は難しいのだが、そこはある種の直感を信じて動くことが、僕は重要だと考えている。
万博の会場を歩きながら、僕はそんなことをずっと考えていた。
北欧パビリオンの展示はもちろん素晴らしかったが、それ以上に印象的だったのは、来場者の熱量だった。
「この場所で変わりゆく未来の種を、必ず持ち帰ろう」という空気が会場全体に漂っていた。
世界のいろんな国が、“自分たちなりの未来のかたち”を提示している。
それを見て、僕は思った。
「やっぱり先に動いた人が、次の時代をつくるんだ」と。
サウナも、発酵も、プラントベースも。
僕がこれまでもこれからも関わっていくことの多くは、流行の少し前に始めているつもりだ。
そのたびに周りからは「早すぎる」と言われたけれど、
振り返ると、あの“早すぎた”時間こそが、僕を育ててくれた気がする。
先にやることの価値は、結果が出たあとにしかわからない。
だからこそ、行動すること自体が“報酬”なのかもしれない。
万博で改めて感じたのは、
「先行者」とは“誰よりも早く未来を信じた人”のことだということ。
そして、その未来を信じる行為こそが、新しいカルチャーや産業を生み出していく。
たとえ失敗してもいい。
それでも、早く動く。
誰よりも先に、次の世界に足を踏み入れる。
そういう人が、この世界を少しずつ前に進めている。
「先行者利益」とは、
その光の向こう側を、少しだけ早く見に行ける権利のことなのかもしれない。
“未来を予測する最善の方法は、未来を創造することだ”
— ピーター・ドラッカーー
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