裏切らない人は、美しい——僕がワンピースを読み続ける理由

  • 機能性発酵飲料「_SHIP KOMBUCHA」の製造販売
  • 100% Plant-Based/Naturalな素材にこだわったカフェ「1110 CAFE/BAKERY(川口市領家)、「BROOKS GREENLIT CAFE(港区南青山)」の運営
  • 約3000坪の自社敷地を活用した各種イベントを開催
  • 自社農場で野菜の有機栽培に挑戦
  • サーキュラーエコノミーの実践                        などなど

素敵な環境を創造し続け、世の中を笑顔で満たす活動をしている、大泉工場のKANです。

僕は、昔から漫画が好きだ。
オタクというレベルには達しないけれど、それでも新刊が出るたびに即購入する作品がいくつかある。
その中でも、ひときわ思い入れが強いのが『ワンピース』だ。

「海賊王」になることを夢見る主人公が、仲間たちとともに「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を目指して大海原を旅する、冒険活劇漫画。自由と友情、夢と信念をテーマに、笑いと涙、壮大な伏線が交錯するストーリーが魅力で、1997年から週刊少年ジャンプで連載され、世界中に熱狂的ファンを持つ、“国民的漫画”ワンピース。

ただ、僕がワンピースを“国民的漫画”だと信じてやまない理由は、世間の評価とは少し違う。
緻密な伏線、少年ジャンプ漫画王道の「友情・努力・勝利」、多彩なキャラクターたち…。
それらももちろん魅力的だが、僕がこの作品に最大の敬意を抱く理由は、ただひとつ。

「裏切らない」からだ。

ここでいう“裏切らない”とは、作品のクオリティそのものではない。もちろん、綿密に計算された伏線や主人公が格上の強敵を倒すという王道のストーリー展開も、僕が読み続ける理由の大きな要因の一つだが、ここでいう「裏切らない」とは、「作者・尾田栄一郎先生が、読者に作品を届け続けている」からだ。


1997年、僕がまだ高校生だった頃に始まり、2025年の今もなお、世界を巻き込んで読まれ続けているこの作品は、あまりにも異常な存在である。
連載1155話(2025年7月現在)、発行巻数は100巻を超え、まだ終わりが見えない。なんなら謎は深まるばかり。
それにもかかわらず、作者はその物語の舵を一度も手放していない。具体的に言えば、ほとんど「休載」がない。

もちろん、近年では体調を理由に休載をされることもある。それもそのはず、30年近くにわたり、毎週新しい話を届けているのだから。でも、それすら事前に読者へ丁寧に告知される。区切りのいいタイミングで、1ヶ月休むということも、大きなニュースとして扱われ、ファンに特別なものとして伝えられる。


その誠実さは、まさにプロフェッショナルそのものだ。週刊連載というファンと(出版社と)の約束を、忠実に守り続け、熱狂を生み出し続ける。

この事実に気づいたとき、不意に小学生時代の、とある授業を思い出した。
体育の先生が、サッカーの授業中突然、クラスメイト全員に対してこう問いかけた。

「三浦カズが、なぜ偉大か知っているか?」

三浦カズは当時から(僕にとっては今もなお)サッカー業界のレジェンド。誰もが知っているスーパープレーヤーだが、「なぜ偉大なのか」は考えたこともなかった。

クラスメイトたちが「うまいから」「得点力が高い」「ブラジルに行ったから」と口々に答える中、先生はこう言った。

「カズは、試合に出続けているから偉大なんだ」

そのときは、なんとなく「へぇー」で終わった気がする。
でも今なら、その言葉の重みがわかる。
怪我をしない、だけではない。
コンディションを整え、戦いの場に立ち続ける。
それは、才能ではなく、覚悟と不断の努力の証なのだ。彼のプレーを心待ちにしているファンとの約束を裏切らない。

尾田先生もまた、まさにそうなのだ。
目まぐるしい日常、膨大な情報、熱しやすく冷めやすい社会。
そんな現代において、“描き続ける”という選択を取り続けている。
それだけで、十分に“ヒーロー”だと思う。

裏切らない、というのは簡単なことじゃない。
誰かの期待に応え続けること。
何かを好きであり続けること。
そして何より、自分との約束を破らないこと。

僕は、裏切らない人が好きだ。
いや、憧れていると言った方が正しい。

そうした人たちの生き方には、結果や賞賛では測れない、ひとつの美しさがある。
誰かのためにではなく、自分との約束を守り抜くその姿が、何よりも心を打つのだ。

ビジネスの世界でも同じだ。
会社を続ける、理念を守る、仲間を信じる、商品を磨き続ける。
すべてが「裏切らないための選択」の積み重ねだ。

そして、それは誰かに褒められるためではない。


「自分だけは、自分を裏切らない」


そんな生き方を貫ける人間でありたい。
尾田先生のように、KAZUのように。

漫画を通して、そんな生き方に出会えるというのも、実は「表現の力」の一つなのだと思う。

大泉工場という船もまた、荒波の中を航海している。
それでも、僕は羅針盤を見失わず、進み続けていく。
いつか、誰かが僕らの船に乗り、同じ航路を信じてくれるその日まで走り続けたい。