- 機能性発酵飲料「_SHIP KOMBUCHA」の製造販売
- 100% Plant-Based/Naturalな素材にこだわったカフェ「1110 CAFE/BAKERY(川口市領家)、「BROOKS GREENLIT CAFE(港区南青山)」の運営
- 約3000坪の自社敷地を活用した各種イベントを開催
- 自社農場で野菜の有機栽培に挑戦
- サーキュラーエコノミーの実践 などなど
素敵な環境を創造し続け、世の中を笑顔で満たす活動をしている、大泉工場のKANです。
泥にまみれた指先の感覚が、まだ戻らない。
お盆の終わり、二日間、ひたすら雑草を抜き続けた。
汗が流れ落ち、シャツは重くなり、手袋を通じて爪の間にまで土が入り込んでくる。
その横では、ブルワーが無言で草を引き抜き、師匠が草を刈り続ける。
黙々と次の畝へと移動していく姿を見ながら、思う。 たった一種類の野菜、生姜を育てるためだけに、ここまでやる。やらなければ、その一杯は生まれない。
2024年末、大泉農場で育てた生姜を使ったKOMBUCHAが、初めて世に出た。
_SHIP KOMBUCHAヘッドブルワーの門田が先頭に立ち、プロジェクトを動かし、形にした一本。発売すると各方面から大きな反響を得て、お客様からの評判も上々だった。
ただ、その評価の理由は「生姜という人気フレーバーだから」という点が大きかっただろう。僕らが汗を流して育てた生姜だと、何人の方が気づいてくれたのかは、正直わからない。
お店で商品が並んだ時点で、商品に込められた想いは、売れる売れないは別にして、一気に薄れてしまうのだ。
今から8年前、僕は前会長から引き継いだ耕作放棄地を開墾し、大泉農場を立ち上げた。 広さは1000平方メートルほど。農場としては小さな規模だが、ここでやりたかったのは「生産者の想いと喜びを、自分自身の身体で知ること」だった。
だからこのサイズがちょうどよかった。
スタッフ含め、周りの人たちからは、なんで週末にわざわざ農作業をするの?と白い目で見られていたが、世界的にも遅れをとる日本の有機農業の現場を、少しでも体感することは、数値化できない、僕らのビジネスの未来につながるアクションである。
だから化学肥料も農薬も使わず、土作りから始めた。
だが、たったこれだけの面積でも、野菜がちゃんと育つ環境になるまでには何年もかかる。 福岡から有機栽培の師匠オーガニックパパ八尋さんに来てもらい、毎月一緒に作業する。気温が年々上がる中、真夏の畑仕事は滝のような汗をかき、蚊に刺され、体力が削られる。
僕が味わってきたのは、生産者の「喜び」よりも、むしろ「苦労」だったのかもしれない。
生活を支える規模でやるなら大型機械を入れ、効率化もできるだろう。でも僕にとって、この農場は利益を出す場所ではない。想いをのせた野菜づくりを、自分が続けるための場所だ。
問題は、その想いをどうやって届けるかだ。
一般流通している野菜を買うとき、生産者の汗や時間に思いを馳せる人は、ほとんどいない。だから、僕が「大泉農場の野菜を使ったKOMBUCHAを作ろう」と提案しても、社内では響かないことが多い。
それでも諦めなかったのは、自分がそういう商品を選び続けてきたからだ。 原価が高くても、流通が限られていても、本質的に良質なものを手に取る。その体験が、自分の中に確かな価値を残すことを知っているからだ。
その価値観を少なからず共感してくれる仲間がいてくれたおかげで、2025年末、再び生姜を使ったKOMBUCHAをリリースできる予定だ。
畑からグラスまでの距離は短くない。けれど、その間に積み重なる一つ一つのアクションが、確実に味に反映される。 本質的に良質なものを作るには、時間も労力もかかる。そして、それをきちんと伝えるには、さらに別の力が要る。
数値化できない「想い」をどうやって伝えるか。その答えはまだ見つかっていない。
でも、僕はこれからも、畑でのアクションと、その延長線上にある一杯のKOMBUCHAを通して、少しずつでも伝えていこうと思う。 泥と汗と想いが混ざったその一杯は、美味しくない理由がないのだ。
このプロジェクトに関わるすべての人に、感謝。