-サステナブルでは“もう足りない”と言われ始めた理由-
こんにちは。大泉工場でWebディレクターをしています、白熊です。
ECサイトやブランド全体のWebディレクションを担当しながら、日々“伝え方、届け方”について考えています。
はじめに
最近、“リジェネラティブ”という言葉をよく耳にする方も多いと思います。
最初に意識したのは、WIREDの特集でした。記事の中で、当たり前のように「再生型」「リジェネラティブな企業姿勢」という表現が出てきたのですが、正直その時点では「……で、結局どういう意味?」というのが本音でした。
そこでWEB記事や生成AIで調べてみたのですが、
「体系の再生」「環境・社会・経済の再生」「持続性を超える概念」など、いろいろ書いてあるもののピンと来ず、むしろ“なんだか曖昧でつかみにくい言葉だな”という印象が残りました。
ただ、よくよく考えると、こういった“わかったようでわからない概念”って、後から社会の当たり前になってくるケースが多いんですよね。
そこで今回、「自分が本当に理解できるところまで分解してみる」という気持ちで調べ直してみました。
その結果、ただの環境ワードではなく、今の大泉工場の事業や思想にも自然につながってくる概念だということで、ようやく腑に落ちました。
このコラムはその“理解までのプロセス”の共有です。
専門家の説明ではなく、一人のWebディレクターとしての視点で、必要最小限の論点だけをまとめています。
WEB記事などがわかりにくかった理由
(そして、多くの人がつまずくポイント)
まずWEB上での定義は、環境・社会・経済・文化など、対象の幅が広すぎて焦点がぼやけて見えます。
読んで気づいたのは、
「リジェネラティブ=再生型」まで理解しても、それが“実際には何がどう変わるのか”が伝わりにくい、ということ。
これは多くの言葉が陥る問題で、
“概念の説明”と“生活や事業レベルの話”が橋渡しされていないので、読んだ瞬間に結びつかない。
例えばこんな疑問が生まれます:
- 何が“再生”されるの?
- サステナブル(持続可能性)と何が違うの?
- 結局、企業や生活者にとって何が変わるの?
この「距離感」が曖昧さの正体でした。
サステナブルとの違いを整理したら、急にクリアになった
一番しっくりきた気づきはこれでした。
サステナブル:持続させる/悪化を防ぐ/維持する
リジェネラティブ:失われた豊かさを“再び/戻す増やす”
つまり、
- サステナブル=0を目指す
- リジェネラティブ=0から+をつくる
という違い。
これを視覚化すると一気に理解がクリアになりました。
| 軸 | サステナブル | リジェネラティブ |
| 基本姿勢 | 守る・維持する | 育てる・再生する |
| ゴール | マイナスをゼロに近づける | ゼロからプラスを生み出す |
| 感情 | “我慢”に寄りがち | “参加したくなる未来”をつくる |
| 対象 | 主に環境・資源 | 環境×人×関係性×文化 |
要するに、
「これ以上悪くしない」ではなく、「良い状態をつくって戻す」という発想へのアップデート。
WIREDの記事で感じた未来っぽさの正体は、まさにここでした。
世界で起きていた“思想のシフト”
さらに海外の事例を調べると、「これは単なる環境配慮ではない」とはっきり理解できます。
Patagonia
会社の目的そのものを「地球を救うため」と明言し、企業活動の存在理由を地球側に振り切った。これは“守る”を超えて、地球の再生そのものを事業の中心に据えるリジェネラティブな発想です。
BLUE BOTTLE COFFEE
一杯のコーヒーの価値を“味”だけでなく、
再生型農法や土壌の回復といった背景まで含め始めている。
投資家の評価軸
BlackRock は “気候リスクは投資リスク” と定義し、
資本の流れを環境改善へ向ける方向に舵を切った。
投資家も再生性・地域還元性・人的循環など、多層的な価値を求め始めています。
これらを追っていくことで
「リジェネラティブ=未来に参加する姿勢」
という感覚が握れました。
大泉工場のやっている方向と、自然に重なる
この概念を整理している途中で、ふと思いました。
大泉工場が各ブランドで大事にしている価値観って、ほぼリジェネラティブ文脈そのものなのでは?
_SHIP KOMBUCHA
ヘルシーか美味しいかの二択になりがちな飲料に、「どちらも成立する」という未来の当たり前を提示している。健康のための我慢ではなく、美味しさと心地よさを両立させる新しい選択肢。“整える”価値観を軽やかにアップデートする未来の飲み物と言える。
1110 CAFE/BAKERY
プラントベースの“制限”イメージを超えて、美味しさを理由に自然と選ばれる未来のカフェ像をつくっている。環境負荷を下げながら、味わいの満足度を高めるという、新しい日常のあり方を提示している。
planet rolls
プラントベースを“ヘルシーかどうか”で語らず、軽やかでポップな未来のスイーツ文化を体現している。素材の香りや見た目の楽しさを活かしつつ、甘さのあり方を少し前に進める存在。
大泉工場という“場”
かつての工場や倉庫を壊さず育て直し、新しい文化や人が集まる“未来の街の実験場”として機能している。歴史ある建物に新たな活動が重なり、小さな循環と出会いが生まれ続けている。
どれも、「環境にいいからやる」だけではなく、
「未来がより豊かになる方向へ、日常の選択をデザインしていく」
という発想に近いと感じます。
しかもそれは“意識的にリジェネラティブを目指した結果”というより、
大泉工場の文化として自然発生してきた価値観なのではないか、と。
勝手にここまで言及すると多少社内から指摘があるかもしれませんが、あくまで私個人の解釈です。
まとめ:リジェネラティブとは、未来に“参加する”という感覚
リジェネラティブを一言で説明するなら、これが一番しっくり来ます。
買う/食べる/飲むという日常の行為を通じて、未来に参加するという選択。
サステナブルが
「悪化させないための正しさ」
だとしたら、
リジェネラティブは
「もっと良い未来を一緒につくるための楽しさ」
に軸がある。
Webディレクターという立場でも、
ブランドのデジタル体験やコンテンツを設計していると、
この“参加のデザイン”という考え方が非常にしっくり来ます。
- どうすれば選んだ人が誇りを持てるか
- どうすれば1つの体験が循環の入口になるか
- どうすれば未来につながる文脈を、生活者と共有できるか
リジェネラティブとは、
環境ワードというより、これからの事業や文化の根っこにある姿勢だと感じています。
もし同じように“曖昧でつかみにくい”と思っている方がいたら、
このプロセスごとシェアした今回のまとめが、少しでもヒントになれば幸いです。





